私ごとですが、、、

泰子さんに朝番をお願いして、朝一で耳鼻咽喉科へ。


昨晩、念願の鰻重一口目にして小骨を喉に刺してしまうという大失態を犯した私。
一口目。
息子は少し苦いといった焦げ目が美しいアクセントになってキラキラと照り輝くまだ綺麗な鰻を前に、一口目で。

大丈夫大丈夫。きっとすぐ抜けて流れ落ちるはず。
そう思ってしばらくは美味しさを噛み締めるように黙っていた。
念願叶って夫が予約して、しかもちょうど待たずに食べられるように焼き上げてくれた鰻なのに…

申し訳なさで「刺さった」と言えなかった。

でも、食事が来るまでハイテンションだった私が急に黙りこくったので、夫はすぐに状況を察したようだ。

「え?まさか?一口目で?」
という無言のメッセージを受け止めて、
「いやいや、すぐ抜けるから大丈夫だし」
という無言のメッセージを全身で伝えたけど、それはなかなか抜けなかった。

ついに子供たちから
「ママ、どうした?」
と聞かれ、もうごまかしが効かなくなって正直に告げた。
「小骨が喉に刺さったかも・・・」
かも、じゃないし。
絶対刺さってるし。


「え〜?大丈夫??」
「ママ、水のんで!!水!」
色々と提案してくれる子供達の丼はもう空に近い。夫はもう、最後の一口だった。
「なんでパパは何もいわないの?」
と優しい娘に対して、夫は
「あ、いや、残念な人だな・・と思って」
と、超真っ当なことをいう。

あぁ。どうしよう。鰻重なのに!私だけテンション下げて、ほんと申し訳ない。でも、どうやっても100%で味わえないの。痛いから。もう泣きたいよ、ママ。

むかし、母から小骨が刺さったときにはお米を噛まずに飲み込めと教わったのを思い出して、何度かトライした。夫も、それがいいと促す。
これが、いけなかったのだと知ったのは翌日のこと。



半分泣きながら、それでも十分すぎるほど美味しかった鰻のお会計を済ませて、お店をでた。


途中、コンビニに寄ってもらい、ガムを買う。ガムならなんとか小骨を私の胃まで連れて行ってくれるはず。願いを込めて結構大きな板ガムを何年振りかに噛み、柔らかくなった頃に飲み干した。

だめだった。

異物感にも慣れてきた頃、自然に溶けたり、抜けたりするかもしれないと言い聞かせながら眠りについた。


今朝起きて、風邪をひいた時のような喉の痛みを感じて、急に現実に引き戻された。

そうだ、骨。
「鰻 骨 抜けない」
と、ググってみる。
すると、掲示板などの前に由緒ある鰻屋さんのホームページが出てきた。ていねいな写真と挨拶のあとに、「鰻の骨がささったときは」という綺麗なページが作られている。

私だけじゃないんだという安心感と、お店のホスピタリティに癒されてページを読み進めると、そこに私たち夫婦が間違っていたことを知らせる教えが書いてあった。

「ご飯を丸呑みするのは、正直お勧めはできません。偶然取れる場合もありますが、もっと深く刺さってしまったり、傷を深くしてしまいます。」

こういうことって、結構ある気がする。
常識だと教わったことが、実はそうではなかったりする。

がっかりしながら読み進めて、私は病院に行くことにした。もうすぐお盆だ。傷口から炎症を起こしたときに病院に行けなくなったら困る。第一、なにも美味しく食べられないのは嫌だ。

予約をした耳鼻咽喉科は比較的空いていて、20分ほどで呼ばれた。

先生に事情を話すと、そんなに珍しいことではないようで、すぐに喉をみせてと言われた。さっと取れるものなのだと安心した。

「お医者さんに行けば驚くほどスッと抜いてくれますよ」。あのサイトに書いてあった通りだ。さすが老舗。

でも、そんなに簡単じゃなかった。

「ないなぁ・・・。」

どうやら、思ったよりも深いところにあるようだ。
「でも、異物感があるのはこの辺なんです。」
と、場所を伝えると、
「ないんだよねー、それらしきものが」

肉眼じゃ見えないといって、器具を使ってくれたけど、最後には鼻からtubeを通してみるという。

鼻に器具を入れるといえば、インフルエンザの検査しか思い浮かばず、あの痛みを瞬時に思い出して全身カッチカチになってしまった。

「大丈夫だよ、喉見させてもらってるほうがキツいんじゃないかなってくらいだから。」

スルスルと細い管が鼻を通り、喉の奥に到達するのを感じた。こわいこわいと思っていると、余計に過敏になるから(子供か。私はもう43歳。)と、肩の力を抜いた。

すると、目の前の先生が希望にみちた声で
「お!!!!!」
と叫んだ。

「ありましたか?!?!」
それまで何の関心もないように無表情で作業にあたっていた看護師さん2人が一斉に振り返ったのが気配で分かった。そっちにもびっくりした。

「ちょ、まっ…   

抜けた!!!!!」

私はこんなに無邪気なお医者様を初めてみた。
先生は太さ一ミリにも満たない1センチ程度の小骨を器用ピンセットで掴み、その腕を上げてガッツポーズをとってくれた。

よくわからないくらい嬉しくて、私は半分泣いていた。
振り返ったら看護師さん達も先生に拍手を送っていた。
「きっと先生の方が何倍も嬉しいはずですよ」と天使の微笑みの看護師さん。

あぁ、こんな明るいテンションで鰻を食べたかったな・・・
そう思いながら、
「実は昨日、念願だった鰻重の一口目で刺さってしまって、、、でも本当に嬉しいです。記念に持ち帰っていいですか?」
と調子に乗ってつぶやいたら、先生達は
「どうぞ!」
とご丁寧にティッシュに包んでくれた。これも、私だけじゃないのかな。

なんとなくメンタルもケアしてもらって処置室をでた。

良かった〜!!!
夫に報告しよう!
あーほんと良かった!

そんなふうに思っていた私に提示されたお会計は、まるで10倍くらいの骨が懐に刺さったようだった。

鰻重、4,160円。
処置費、4,120円。
これ、夫に絶対に言えないよ。

骨と、包んでくれたティッシュ。



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